prologue


生まれて初めて交通事故に遭遇した高校一年の春。
俺は「人生って何が起こるか判らないモンなんだなあ」としみじみ思った。
そんな非凡な出来事、自分には関係ないと思ってたし。トラックに轢かれた瞬
間だって、「すげえ、俺轢かれちゃってるよ」とか考えてたモンだった。

結局、人は実際に遭遇して初めて、非日常なんて紙一重で存在しているってこ
とに気が付くんだろう。

年の割りに枯れた性格をしていると評判だった俺・瀬田 優心は、そんな風に
人生を考えていた。万札の入った財布を落としちまったときも、彼女に二股か
けられたときも。「長い人生、こんなこともあるよなあ」の一言で諦めがついた。
流石に、大学一年の夏にお袋がポックリ逝っちまったときは、「何で俺のお袋が」
って思わないでもなかったけど。でもそれだって、考えてみたら珍しいことでもなんで
もない。家族と死に別れたヤツなんて、日本だけでもゴマンといる。




が、





家族と世界で別たれたヤツは、一体どれほどいるんだろう。











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