「――あ? ・・・なあ、此処に置いてあった酒は? 青い瓶の」

「青い瓶? それなら今こちらに」

「お、サンキュー・・・・・・・ってちょっと待てこらシャートおいぃい!?」

「嫌ですね、いきなり腕を掴まないで下さいよ。お玉が落ちて痛い思いをするのは貴方で
 すよ」

「お前今明らかに振り上げただろ?!振り上げたよな!?」

「いいえ、熱いお玉が触れないよう避けただけです。貴方の為を思って」

「胡散臭い笑顔浮かべんじゃねぇ!そして話を逸らすな!何でこの瓶カラなんだよ!?」

「胡散臭いだなんてそんな、私は本当に貴方の為を思って・・・」

「んなツラしたって誤魔化されねーぞ俺は!」

「ツラ? 誤魔化す? 一体なんのことです?」

「今現在進行形のそのツラのことだよ!」

「私の顔が一体何だっていうんですか」

「それはお前が一番良く判ってんだろッ!?
 ・・・いいか、己の武器を最大限に利用しようってその考えは嫌いじゃねぇ。
 だがな、そう何度も同じ手は食わん!残念だったな!」

「・・・ふふふふふ、寝言は寝て言って下さいアルフ」

「・・・何?」

「食わないも何も。私の顔を引き合いに出した時点で、既に貴方の負けです」

「!!!!」




「――あ、そろそろシチューも煮えましたかね。今日はビーフシチュー風味のシチューを
 作ってみたんです。アルフの口にも合うと良いのですが」

「・・・・・・・・・・・何だその、ビーフシチュー風味って」

「ビーフは入っていませんから」

「・・・・・・。・・・俺は肉が食いたい」

「お肉もちゃんと用意してありますよ。ただ、たまには同じメニューを一緒に食べたいという
 ささやかなお願いです」

「・・・・・・・・・・・・さっさと持って来い」




「どうですか? やっぱり肉がないと美味しくないですか?」

「・・・別に、悪くはねぇよ」

「そうですか。それは良かった」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・「・・・ぁあ!!」

「わ、いきなりなんです」

「思い出したッ、てめ、あの酒どこにやった!?」

「あの酒ってどの酒で」

「だから青いヤツだっつってんだろ!クソっ、まんまと騙された・・・ッ」

「人聞きの悪いことを。あのお酒なら既に貴方の胃袋の中ですが」

「性懲りもなく杜撰な嘘つくんじゃねえ!やるならもっと全力でやれ!!」

「矛盾も甚だしいうえ言われもない批判ですね。私、嘘なんてついてないのに」

「お前こそ寝言は寝て言えよ?」

「本当ですってば、あのお酒は貴方に美味しく頂かれました。
 ・・・・ビーフシチュー風味のシチューとなって」

「んなッッ?!」

「あはははは。お代わり、如何ですか?」

「〜〜〜〜〜っ!!」




嗚呼!その白い咽喉を噛み切ってしまいたい!




「―――お代わり!肉!全部持って来い!!」

「まだまだたくさんありますからね。ごゆっくりどうぞ」