剣と王冠@



「そういえばお前、家出中なんだよな?」

「家出じゃありません、出奔です」

「なにが違うんだよ・・・・」

「家出だなんてそんな、市井のひねくれたガキみたいじゃないですか、もう」

「お前のがよっぽどタチ悪ぃよ。すでに立派な魔の森の住人だよ」

「本当ですか?うれしい」

「・・・・・・・・・。な、家族はどうしたんだよ」

「ええ?いやだなあ、私の新しい家族は貴方じゃないですか」

「?!!なっ、ちっげぇよ!!血族の話してんだよバカが!!!」

「照れてるのがバレバレですよ。難儀な体ですねえ」

「ッだ!っからもー、あ゛―――――!!!」








剣と王冠A



むかしむかしあるところに、“花と森の王国”と呼ばれる美しい国がありました。
その国には三人の王子様がいましたが、一番上の王子様は王様になり、
三番目の王子様は王国の騎士になりました。

しかしただひとり、正妃様の御子でなかった二番目の王子様は、
お母上が天に召された哀しくうつくしい夜に、王国から姿を消してしまったのでした。

「ああぁぁぁあああぁあ・・・!!シャートはまだ見つからないのか・・・!?
 ―――ぇえい、もうこうしてはおれん!私が行く!!!」

「へ、陛下!どうか、どうかお留まりくださ・・・・・ッ」
「なりません、それだけは、それだけはなにとぞッ」

二番目の王子様が消えてしまってからというもの、
兄である王様は心配で夜も眠れない日々を過ごしていました。
宮廷魔術師たちが日夜さがしているにもかかわらず、髪のひとすじさえ見つけることが
できなかったからです。

「―――ウォル兄・・・・?また何を騒いで、」

「っ良い所に来たリューナーク!!
 今すぐお前の部下を総動員してシャートの捜索にあたれ!!!」

「な、なにを急に。第二師団なんて動かしたら国民にバレバレでしょうが」

「フ、それくらいシャートが見つかるなら安いもの、」

「いやいやいや、ちょ、落ち着いてくれよウォル兄。まだ二ヶ月しか経ってないんだし、
 あのシャー兄が早々どうにかなるタマかって。焦ることはないさ」

「・・・・・・・・っく・・・」

本来なら、この王国の一大事に騎士団がだまっているはずがありません。
しかし王弟が行方知れずになったとあればきっと国民は大騒ぎ。
王国にもよくない影響がでてしまうかもしれません。
なので、公に二番目の王子様を探すことはできなかったのです。


「・・・・・・・シャート・・・・。一体何処へ・・・・」


こうして、いっこうに見つからない二番目の王子様の身を案じながら、
王様と三番目の王子様は日々を過ごしていたのでした。




*





「―――なにやら急に寒気が。いやな予感がします」

「や、風邪でもひいたんじゃねぇの」

「いえ、私はこういう勘に関しては一家言もっているのですよ。
 きっと兄たちが私を探しているに違いありません」

「家族を悪寒扱い?!」

「だから私の家族は貴方だけだと何度いったら。
  ――――それに何より、あんなブラコンと剣術バカが家族だなんて、片腹痛い」

「お前、それが本音だな?」