姫君の歌声@
「そういえば、さきほど庭の小鳥が妙なことを口走っていまして」
「ハァ?ことり?一応あいつらも魔物のはしくれなんだが」
「この私に向かって、“おひめさま、おひめさま。にんげんのおひめさま”
などとさえずってきたのですよ。なんとも可愛らしいあたまですねえ」
「・・・・・・。それはアレだな、この森のヤツらは、俺がお前をさらってきたと思ってっから。
そんでお前、“黒狼の姫君”とか呼ばれてんだよ。ひでぇ誤解だ」
「成人男性を姫呼ばわりとは・・・。魔の森の程度が知れます」
「いや、お前の性別知ってんのそんないねぇから。魔の森全否定すんなよ。
・・・・・だいたい、顔だけ見りゃ、お姫さんでもいけんじゃねえ?」
「それについては私も認めざるをえません」
「なにソッコー認めちゃってんのお前!?怒ってたんじゃねーの!?」
「私の母は国一番と謳われた美女です。そして私はそんな母に瓜二つ。
顔のことに関して言えば、認めるのもやぶさかでなく」
「・・・・・・・・じゃ、何がんな気にくわねえんだよ・・・」
「“黒狼の姫君”と“姫君の黒狼”では、ずいぶんと差がありますよね」
「ソコかよ!!!」
姫君の歌声A
「――まあ確かに、私は貴方に守られていますけど。これでも王族の一員として、
それなりの訓練はつんでいるのですよ?」
「たかが護身術で魔物が倒せるか。しかもお前」
「失礼な。貴方とたいして変わらないじゃないですか」
「身長の話じゃねえよ!それに俺のが指一本高いわ!!」
「なにムキになってんです。でも実際、撃退するぐらいなら造作もなく」
「・・・・ほぉ。そこまで言うならやってみろや」
「ちょっと、重いんですけど。可愛いですが」
「お前ほんとナメてる?マジかむぞ?」
「尻尾ふりながら言われても・・・。それに、本当に、かまわないんですか?」
「乗っかっただけで動けないヤツに何ができるっつーの。って、コラ、肉球おすな」
「嫌がらせは出来ましたけど」
「うん、かむから。ちょっとかむから」
「アハハハくすぐったいですよ。あのですね、聖女だったんです」
「ハ、だれが?」
「私の母が」
「・・・・・・・・・・・・は・・・?」
「なので、聖歌が歌えるんですよね私。神官の修行もしましたしねえ。
たしか魔物って、聖歌を聴くとしぬほど気持ち悪くなるそうで。それって本当ですか」
「うん、悪かった。お前を普通の人間の尺度ではかった俺が悪かった。だから歌わないで」
「それのドコが謝罪なのか判りませんが。まあいいですけど。
さ、ちょっと横にずれてください。ちょうどいいんでお昼寝しましょう」
「おぅ、」
「たくさん太陽の光をを浴びて、ふかふかの毛皮になって下さいね。
ああ、今夜は気持ちよく寝れそう」
「・・・・・・・・・・・。」