ある日の三人の王子様たちの会話



「そこにいるのはシャートじゃないか!」

「え?――あ、ほんとだ。なんか久しぶりに見た気がすんねっつーか良く見つけたね」

「シャートは「母上の快癒を神に祈りたいので」と言って余り神殿から出て来ないからなぁ。
 なんて慎ましくも心清らかな子なんだろう・・・・」

「・・・や、それはちょっと違うと思うなー俺」

「そうだな。シャートは控え目でも芯はシッカリしているからな。それがまた庇護欲を
 そそるというか何というかとにかく可愛い」

「・・・・・・あー、うん、確かにね。強いよね。うん。人は見た目じゃないよね」

「はは、何だその浮かない返事は。もちろんお前も私の可愛い可愛い弟だぞ?」

「ハハ、ウォル兄も可愛そうなくらい盲目だと思うよ」

「はははっ、お前達が可愛いのは事実じゃないか!」

「だったら良かったんだけどねぇ、」

「お前達がいくつになっても、私にとっては可愛い弟のままだよ・・・」

「まぁそれはもう良いとして、シャー兄行っちゃったけど?」

「なに?! し、しまった!!」

「って、ウォル兄!?」

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「――おーい、シャート!」

「・・・・・・・・・・・」
 
「シャートー!!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「おーいっ、シャァァアトォォォオ!!」

「・・・・・・・・・・・・・・おや、兄上ではありませんか。王ともあろう御方がそのように大声を出
 して犬のように駆け回るものではありませんよ」

「いや、そりゃ、シャー兄が、シカト、したからじゃ」

「リューナーク王子もいらっしゃったんですか」

「・・・・・・・・・うん」

「っはあ、シャート、随分とぼんやりしていたようだが、ハッ、何か、あったのか?」

「いやだからスルーされてたんだってば」

「どうかしましたかリューナーク?」

「・・・・・・何でもないッス」

「ああ、シャート。しばらく見ない内にまた美しくなって」

「一ヶ月で人はそう変わらないと思いますが。兄上の金の髪も今日の晴天により一層輝い
 ていらっしゃいますね、目に痛いほど」

「それは俺も思う」

「私としてももう少し渋い色合いが理想だったんだがな。母上では無く、父上のような」

「なんつー贅沢な悩みだよ。大体ウォル兄にそんなんらしくないし」

「その顔で髪色まで同じでは先王と似過ぎて気味が悪いですよ」

「そうだろうか・・・・。」

「俺なんて王族っぽくない地味ーな色だぜ? ま、気に入ってるけどさ」

「リュークは父上と母上から優しい色合いを貰ったから心根も優しい子に育ったんだろう。
 気高い母上の深緑の瞳、偉大な父上の亜麻色の髪、まさに森の動物達を慈しみ育てる大
 樹そのままに」

「・・・・・・・・わかった、わかったからその言い回しはやめてくれ・・・・」

「その論理でいくと、私は氷のように冷たく血を流すことも厭わない悪魔のような人間と
 いうことになりますね。あながち間違いでもありませんが」

「何を馬鹿な! お前の透き通るような水色の髪も蕩ける真紅の瞳も、新雪の如く穢れない
 心と情愛の深さをこれ以上無く表しているだろうに!!」

「それは自分の情愛が深いと高らかに宣言しているようなもので」

「今更じゃん」

「その通りですね。私としたことが」

「私の愛はお前達は言うに及ばず、この王国に遍く向けられている!」

「国だけにしておけば良いものを」

「しゃ、しゃー兄?」

「おや、そろそろ祈祷の時間じゃないですか。兄上、リューナーク王子、失礼」

「ああッ、シャート!? まだ一ヶ月分の補充が!」

「兄上も執務がおありでしょう? ご無理はいけませんが頑張って下さいね?」

「もちろんだとも!!」

「・・・・・ウォル兄ってシャー兄の微笑みに弱すぎる・・・」

「・・・リューナーク王子?」

「おおお俺も稽古つけてくる!!」